先生方へのメッセージ
学生の皆さんへも
このリンクの文章は知覚における精度と確度 (H. Ono, 1993) のユーザーマニュアルにある同じ表題の文章を修正したものです。
このサイトは、学生ユーザーの間に、その数学能力と内容を学ぶ意欲に大きな差があることを前提にしています。ユーザーには背景となる知識も電卓の使い方以外の技量もほとんど無いことを前提にしつつ、心理物理学的方法を教える際にそれらの差からくる困難さを、ここではなんとか乗り越えようとしています。また、このサイトは学生が自分のペースで学習できるようになっています。難しいと思った箇所は繰り返せますし、さっさと先に進むこともできます。計算や設問への解答では、その正誤がすぐにわかります。さらにこのサイトは、心理物理学的概念をより具体化し、講義を聞くよりも学習過程を楽しくする実践経験を積ませてくれます。これは、実験実習や(個人やグループでの)学生向け課題、あるいは実験、感覚、知覚、認知心理学コースのデモ用ですが、内容的には、学生が気づかずに自分の研究でおかすことがよくある混同と、どうしたらその混同を避けられるかについて特に強調しているため、実験計画法のコースにも利用できます。
この20年間このパッケージの改良を重ねてきましたが、すべての学生が内容についていちいち質問せずにやり通せるようになるまで、私は改良し続けるつもりです。それゆえ、このパッケージを良くするご意見を皆様から頂戴できれば幸いです。ホームにある「感想をお聞かせください」のページをご覧ください。
以下にこのパッケージの改良の経緯を簡単に説明しますが、それは同時にこのサイトの各パートの解説でもあります。最初のコンピュータプログラムは、心理物理学的方法で実験をすれば、精度(JND)と確度(恒常誤差)のような概念は当然わかるだろうという、いささか素朴な考えに基づいたものでした。私の息子のKenneth Onoに協力してもらって、それぞれが異なる古典的心理物理学的方法を用いる3つの実験で、精度と確度を学生たちに実際に測定させるプログラムを書きました。学生は私の講義を聞くよりも喜んで実験を行ないましたが、実験をするだけでは学生の理解は進みませんでした。
そこで、精度に関する実験と確度に関する実験をすれば二つの概念の違いをはっきりさせるのに役立つと考えて、「ウェーバーの法則」と「ミュラー・リヤー錯視」という二つの実験を追加しました。(上に述べた5つの実験は、現在の「実験とデータ解析」の部分となり、学生たちが新たに実験装置を組立てたり入手したりせずに、自分の実験を計画し実施することができるようになっています。学生が実験のパラメータを決めたあとは、刺激提示、データ収集とデータ分析を、コンピュータがきめ細かく面倒を見ます)。この2つの実験を追加したことで、精度と確度の違いを考える学生も現われましたが、他の学生は理解を深めることなく実験を機械的にやるだけでした。
この欠点を修正するため、私のポスドクをしていたMark WagnerがKenneth Ono と私に加わり、「チュートリアルとクイズ」と「見直しクイズ」を追加しました。チュートリアルでは、学生が自分を被験者としてデータを得て、そのデータ(またはサンプルデータ)はグラフや表で表示されます。データの解釈と分析は事前に解説され、段階的に分析へと導く質問に学生が答えながら自分のデータを系統的に分析するのを助けます。「チュートリアルとクイズ」セクションのクイズは、各チュートリアルで学んだことをテストします。見直しクイズはパッケージ全体についてのテストになっています。さらに、自分たちが何を学ぶことになっているかをはっきりとわかっている場合に学生達はよく勉強するという考えから、何を学ぶことを学生は期待されているのかが明確になるように「概要と目標」が追加されました。「心理物理学事典」と「計算ヘルプ」は、先生よりも迅速に学生を支援するよう追加されました。
上に述べた内容は「古典的心理物理学的方法」(1987)と「精度と確度」(1989)という2つの別々なパッケージ(IBMばかりでなくApple II向けにも)となって実を結び、ともにConduitから市販されました。次のパッケージの知覚における精度と確度ではより親しみやすいマッキントッシュのハイパーカード形式を採用し、もとの二つのパッケージを改良し、実験計画の重要性を強調した「例題実験」セクションを加えて、ひとつに統合しました。Intellimation (この会社は今はありません)がこの2番目のパッケージを販売しました。
学生は3種類の心理物理学的測定法をどの順番で学んでも構いません。しかし、極限法を最初にするのが教育上は効果的です。というのは、上弁別閾と下弁別閾の操作的定義が、他の二つの方法のそれよりも直観的でわかりやすく、精度の概念を理解しやすいからです。しかし、ある学生には別な順番の方が合っているかもしれません。すなわち、統計学コースをちょうど終了したばかりの学生には、標準偏差の算出を学んだところから始めるのに調整法が最適かもしれません。
よい学生は教師によらず学ぶという諺はこの教育サイトにも同じ様に当てはまり、私の学部生向けの知覚のクラスの少数の極めて優秀な学生は、5つのチュートリアル、「見直しクイズ」、自分たちの3つの例題実験を、質問することもなく3時間かからずに終えました。彼らは関連する概念を容易に把握し、その後の試験の成績も上出来でした。もちろん、こういう学生たちにとっては従来の講義形式でもよかったわけで、この話題についての先生の講義時間を短縮した以外に、さしてパッケージの利点はないことになります。このサイトは助けてくれる先生が常に傍にいるように(事典と計算ヘルプは常に利用可能)作られていることを最初に説明しておくと、他の大多数の学生には役立つようです。このような学生はコンピュータ以外の助けを必要とする場合がありますが、通常は前に戻って本文をもっと注意深く読み直すよう指示するだけで、十分のようです。
このパッケージがウェブ形式に変換される以前、私は学生たちに3時間のコンピュータ実習の授業を2コマ履修し、5つのチュートリアルと「例題実験」に記載された3つの実験を行なうよう求めました。彼らは、データを取って3つの例題実験の問題に答えるだけでなく、5つのチュートリアルのワークシートを埋めて提出するよう求められました。最近、Al Mappと櫻井研三はこのウェブ形式のパッケージを2週間の授業計画に織り込みました。電子メールのアドレスがページ中に記載され、通常のオフィスアワーには学生が質問できるようになっています。私の以前のやり方とは違いますが、Al Mappの最近の授業計画を以下に示します。
心理物理学実験
はじめに
心理物理学は環境からの刺激(物理的次元)と感覚経験(心理的次元)との間の量的関係を研究する学問です。心理物理学的方法を用いて測定される人間の行動の2つの基本的変数は確度(すなわち妥当性)と精度(すなわち信頼性)です。これら2つの測度はほとんどの心理学のコースで出会う概念に関係しています。
ここで提供するパッケージは5つの独立したモジュールで構成されています。3つのモジュールでは、確度と精度の測定によく用いられる心理物理学的方法を学ぶ実践経験ができます。それらの方法は、極限法、恒常法、調整法です。他の2つのモジュールでは、確度と精度の概念をどのように応用するかを学ぶ実践経験ができます。ミュラー・リヤー錯視とウェーバーの法則を検証しながら、これを行ないます。各モジュールにおいて、(a)そのモジュールの目的の明確な説明、(b)そのモジュールに関係するデータの収集と分析の実践経験、(c)鍵となる概念をどれだけ理解できたかをテストするよう設計されたオンライン・クイズの利用、そして(d)プログラムの変数の変更とそれによる独自の実験計画、が可能です。
あなたの課題
次のホームページ(http://www.ipc.tohoku-gakuin.ac.jp/psy3/psycho/ja/index.html)を開き、上に説明した5つのモジュールをひとつずつ実施してください。各モジュールには4つのサブセクションがあります。各モジュールの鍵となる部分はチュートリアルとクイズのセクションです。そこであなたはデータを集め、そのデータを分析し、データと方法についての質問に答えることになります。クイズの答を記入できるワークシートは「はじめに」の終わりのところからダウンロードできます。ワークシートを提出する必要はありません。皆さんが使うためだけのものです。
実験レポート
心理物理学ウェブサイトのメニューの最後の隣にある例題実験では、3つの実験が説明されています。心理学実験実習Aでは、実験1を「心理物理学的測定法」で、実験2を「ミュラー・リヤー図形の錯視量測定」でそれぞれ実施します。データを集める際は説明に書かれているやり方に従ってください。基本的なデータはコンピュータが集計して表示してくれます。実験1と実験2のそれぞれでデータをもとに、問題の背景、目的、方法、結果、考察(と結論)、引用文献に整理したレポートを提出してください。
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