適切な視覚効果による流れの把握        

はじめに

 
 これから流体工学を学ぼうとする者がさまざまな流れを理解しようとするとき、白黒の静止画像の流れをみるよりは色分けされた画像やアニメーション(動画)をみたほうが把握しやすいであろう。
 これまでの流体工学関連講義では、教科書に掲載されている図によって各種流れの説明を行うことが多かったのではなかろうか。しかし、最近では、コンピュータプレゼンテーション環境の整備も進み、カラー画像や動画を使用することが容易になった。よって、コンピュータを利用した流体工学関連教材を準備することも必要となってきている。

 ※ ここで用いられている専門用語やさまざまな定義については今後解説していく予定。

従来の画像

 
 ここでは流れの一例として二次元急拡大流路(後方ステップ)内の定常非圧縮性粘性流れ(層流)を取り上げる。この流れはレイノルズ数(Re)の増加によって急拡大部にできるはく離渦の大きさも増加することなどが観察できるので、流れの数値解析入門時によく取り上げられる(例えば中山泰喜著「流体の力学」養賢堂P.225、数値流体力学編集委員会「非圧縮性流体解析」東京大学出版会P.118など)。以下に数値計算によって得られた流線の一例を示す。

図  ステップを過ぎる流れの流線

  

 上では、はく離渦内(下図の赤色の部分)を除いた領域(下図の緑色の部分)において流線関数の値を等間隔で描いたものである(はく離渦内の流線間隔はその1/10)。よって、流線関数の性質を知っている場合は、どこで流れが速くなるのかは容易に把握できる。また、定常流であるのでこの流線図だけで十分なのである(各流線についてその値を明示する必要もあるが)。

 

 しかし、これから流体工学を学ぼうとする者や流れ現象に関して興味を持ち理解しようと努めている者にとってはもっとわかりやすい表現法によって流れを観察したほうがよいであろう。その後、流線関数等の性質を理解すればよい。

カラー画像の例


 以下に流線関数の値によって色分けされたカラー画像(すなわち、流線関数の等値面)の例を示す。図には速度ベクトルも重ね合わせている。図のように値の大小が把握しやすく、他の情報も同時に示すことができる。

図  ステップを過ぎる流れの流線関数等値面と速度ベクトル


 
 

動画の例


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 以下の図は色のついた粒子を流れに混入させた(粒子の動きは流れに従い流れを全く乱さないと仮定している)ときのアニメーションである。上方の図は流出した粒子と同数の粒子を入口付近にランダムな色で混入させた場合を示し、下方の図は流出した粒子と同数の粒子を入口同一面から同一色で混入させた場合を示している。静止画より格段に流れを把握しやすいことがわかる(特にはく離渦内の速度や流れ方向)。また、下方の図は急拡大前の速度分布を理解するのに適しているといえるだろう。

図  ステップを過ぎる流れのアニメーション(ランダムな色の粒子混入)

 

図  ステップを過ぎる流れのアニメーション(入口で同じ色の粒子混入)


   

まとめ


 これまでに示したように一つの流れをとってみても表現方法によって理解のしやすさが大きく変化する。本研究室ではさまざまな流れに対してそれぞれどのような表示法が適切なのかを検討する研究も行っていく。
  

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Tohoku Gakuin Univ.