中村先生の写真人間情報学研究所講演
中村 慶久 氏
(東北大学電気通信研究所)
IT社会を支える情報ストレージ技術
Information Storage :One of the Leads in IT Society


※本稿は、平成13年10月24日に東北学院大学泉キャンパスにて行われた講演をもとにしたものです。
なお、文中の[ ]内の数字は参考文献(むすび・参考文献のページに記載)を示す。

1 はじめに


 云うまでもなく、IT (Information Technology) はソフトウェアだけではない。大儲けできるビジネスソフトも、これを実現するハードウェアがないと、ただの紙屑である。
 しかし、如何に優れたハードウェア、すなわちコンピュータがあり、ネットワークが完備していても、HDD (Hard Disk Drive) やFDD (Floppy Disk Drive) などの情報ストレージ技術がないと、IT社会は成り立たない。HDDにOS(Operating System)を書き込んでおかないと、電源を入れてもコンピュータシステムは起動しないし、システムを何とか立ち上げたとして、ネットワークを通じて送られてきたデータや新たに作成されたデータを何処かに一時保存しておかないと、すぐに消えて二度と使えなくなる。

図1 HDDやFDDは、磁性薄膜に情報を書き込んで保存する装置である。この飛躍的な性能向上が、今日のようなOSの充実、使い勝手のよいコンピュータシステムを実現し、大容量HDDを多数組み込んだサーバが大容量、高速、かつコンパクトになったことで、ITビジネスが活発化した。磁気による情報蓄積(ストレージ)技術は、半導体デバイスによる情報処理(コンピュータ)技術や光ケーブルなどによる情報伝送(ネットワーク)と共に、IT社会を支えるハード三本柱の一本なのである(図1)。デビッド・モシェラは、「21世紀はコンテンツの時代になり、主要技術はソフトである」と予言している[1]。しかし私は、主要技術はストレージであると思う。

 1997年当時から、HDDの性能指数の一つである記録密度は、ほぼ10倍向上した。ムーアの法則「半導体の性能は2年で倍の割合で向上する」を凌いでいる。このようにHDDの高密度化が急速に進むとは、磁気記録の研究開発に携わっている我々でする予測できなかった。VTRの進歩は、TVや映画、音楽を気楽に楽しめるようにしたが、それだけでなく、これを使って芸術やスポーツの技を磨くなど、文化の向上にも大いに貢献した。これと同様に、ストレージ技術の進展で質の良いディジタル・コンテンツを多数蓄積できることになり、21世紀に新たなIT文化を花咲かせることになる。

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