研究員紹介
松本 章代(教養学部情報科学科)
プログラミングと私



1.プログラミングとの出会い
 私は現在,本学で主にプログラミングの授業を担当しています。私がプログラミングと出会 ったのは中学 1 年生のときです。「これからはコンピュータの時代,パソコンは将来役に立つから」と親を説得し,「MSX2」というパソコンを親に買ってもらったのがきっかけでした。この当時のパソコンには「BASIC」というプログラミング言語の開発環境が組み込まれていました。最初のうちは,パソコン雑誌に掲載されているプログラムをそのまま打ち込んでゲームを作っていましたが,次第に自分でプログラムが作れるようになりたいと思うようになり,独学で勉強しました。

 こうしてすっかりプログラミングのとりこになった私は,大学は「情報システム学科」を選びました。

2.「プログラミングを教える」道へ
 学部生時代はプログラミング技術を磨き合うよい仲間に恵まれ,非常に充実した学生生活を送ることができました。授業の課題以外に,趣味で常に何かしらのプログラムを組んでいたように記憶しています。時代はまだ「インターネ ット」が一般に普及する前で,自作したアプリはフリーソフトとして「パソコン通信」で公開していました。

 一方,学部生時代,塾講師のアルバイトをとおして「教えることの喜び」を知った私は,得意なプログラミングを教える職業として,コンピュータ系専門学校の教員になる,という道を選びました。

 専門学校教員という仕事は,大学教員と異なり「研究」はありませんが,専門教育のみならず,生活指導・教務・就職指導など様々な業務があります。


松本先生の写真
(まつもと あきよ)
静岡県三島市出身
1997年 文教大学情報学部情報システム学科卒業
1997年 専門学校静岡スクールオブビジネス(翌年,専門学校静岡電子情報カレッジに改称)専任教員
2002年 静岡大学大学院情報学研究科修士課程 入学
2005年 東京工業高等専門学校 助手
2008年 静岡大学大学院理工学研究科博士後期課程 修了
2008年 青山学院大学理工学部 助手
2009年 青山学院大学理工学部 助教
2010年 東北学院大学教養学部 講師

 専門教育では,プログラミング教育および経済産業省の情報処理技術者試験対策を担当しました。1 年目から授業を任せてもらえましたし,もちろん授業内容も自由に決めることができました。

 また,ゲームエンターテイメント科の立ち上げに関わり,以降,教務の責任者として,カリキュラムの作成から,1つずつ専門科目の内容を決め,教材を作成し,実際に講義を行うところまで,すべてを担当しました。

 学部卒業直後の1 年目からこれほど裁量権が与えられている職場は,他にそうそうないと思います。非常にやりがいを感じながら仕事に取り組むことができました。

 ただ,就職して4 年も経つと,経験を積んでいくうちに要領を覚え,仕事が効率的になるのと同時に刺激が減り,マンネリを感じるようになりました。1 年目から責任の大きい仕事を任せてもらえる一方,経験を積んでいっても仕事内容がほとんど変化しないことに気が付いたのです。さらに,学校は毎年ほぼ同じスケジュールで動きますから,5 年,6 年,と勤めていけば各イベントも5回目,6回目となるわけです。今はまだよいけれど,定年まで毎年,数十回も同じ流れを繰り返すのはつまらないなと思いました。

 また,他の先生方が実務経験を積んだうえで教員になっているのに対し,私は卒業してすぐ教員になってしまいましたから,そのことに対して引け目がありました。「自信をもって教えるために誇れる技術力を身につけたい」と感じていました。

 このような状況の中,大学院への進学を決意し,就職して5 年目の夏に受験。なんとか合格を果たしました。

3.「プログラミングで研究する」道へ
 大学院では,自然言語処理の研究室を選びました。自然言語処理とは,(プログラミング言語ではなく)人間が使う言語をコンピュータに理解させたり発話させたりするための技術のことです。

 私は「自然言語処理技術を応用したウェブ検索」を主な研究テーマとしました。これは,ウ ェブ検索エンジンに,ユーザが検索ワードとして入力した語から検索意図を推定し,その意図に適った検索結果を提示することを目指した研究です。たとえば「熱帯魚 飼育」という検索ワードは「一般名詞+サ変名詞」という組み合わせです。このパターンでは「一般名詞」が「サ変名詞」する方法(この例なら熱帯魚を飼育する方法)が検索意図だろう,と推測するわけです。そこで「熱帯魚を飼育する方法」について記載されているページを判定し,検索結果として提示します。つまり,検索ワードの語間には何らかの意味的関係があると考えられるので,その語が同様の意味的関係をもって文書中に出現しているか否かを判定することによって,ウ ェブ検索エンジンの性能を向上させよう,ということなのですが,この「判定」がなかなか難しいのです。

 現在はさらに研究対象を広げ,自然言語処理技術や研究で培ったウェブサービスの開発力を活かし,教育や福祉分野を中心として様々なウ ェブサービスの開発に力を入れています。

 自然言語処理は,情報科学の中では人工知能に分類されますが,言語学と密接な関連をもち,心理学や哲学との接点も多い,まさに本学教養学部の各学科間の境界にあるような学問領域です。いずれぜひ他学科の先生方と共同研究を行 ってみたいと思っています。よろしくお願いいたします。


※ このページは、2013年3月刊行の『人間情報学研究 第18巻』に掲載された記事を元にしております。その後、略歴や所属等に変更がある場合がございます。


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