研究員紹介
武田 敦志(教養学部情報科学科)
人々の生活をそっと支える情報通信システム



 現在、社会的規範や利用者の社会的関係を考慮して人々の生活をそっと支える情報通信サービス「Socio-familiar Personalized サービス(S-P サービス)」の研究開発を行っています。本稿では、S-P サービスの概要をご紹介します。


 
現在の日本社会では、高齢者介護や働く女性の支援などの社会的サービスが必要とされています。しかし、少子化により労働人口が減少しているため、情報通信システムを活用して、きめ細やかな社会的サービスを妥当なコストで提供しなければなりません。このような社会的サ ービスにおいては次の事柄が重要となります。
 ●いつでもどこでも必要なサービスを提供できるユビキタス性
 ●社会的規範や利用者の社会的関係を考慮したサービス設計

 インターネット接続環境が整備され、スマートフォンなどの高性能小型端末が開発されたため、ユビキタス性に関しては達成されつつあります。そのため、社会的規範や利用者の社会的関係を考慮したサービスを低コストで提供する情報通信システムの実現が次の課題となります。

武田先生の写真
(たけだ あつし)
2000年 東北大学工学部電子工学科卒業
2005年 東北大学大学院情報科学研究科博士課程後期3年の課程修了 博士(情報科学)取得
2010年 東北学院大学教養学部 講師

 現在、インターネット上での商用サービスでは、利用者の嗜好や目的を考慮したサービスの提供が行われています。一方、将来の情報通信サービスでは、利用者の嗜好や目的に加え、社会的規範や利用者の社会的関係を考慮した個人適応型サービスが重要となると予想されます。個人適応型サービスを実現するためには、利用者の個人情報から必要なサービスを自動的に判断し、そのサービスを能動的に提供する仕組みが必要です。このサービスを実現するにあたっては、以下の事項に留意しなければなりません。
 ●人間の尊厳を守る
 ●システム側がサービスを押し付けない
 ●そっと支援する
 ●心のこもったサービスを提供する

 上述の要件を満たすサービスの実現を目指し、社会的規範や利用者の社会的関係を考慮して人々の生活をそっと支える情報通信サービス「Socio-familiar Personalized サービス(S-Pサービス)」の研究開発を行っています。

 




 図 1はS-Pサービスを提供する情報通信システムの構成です。このシステムの特徴は、個人情報を利用者の家庭に設置されたホームサーバで管理し、必要に応じて必要最小限の個人情報をサービス提供者(レストランや薬局など)に開示する点にあります。この特徴により、従来の情報通信システムでは困難であった、複数の端末間での連携や複数のサービス提供者間での連携が可能となります。例えば、薬局で薬を購入した後にレストランで食事をする場合、薬局で購入した薬との食べ合わせ・飲み合わせを考慮したメニューの推薦ができます。

 S-P サービスでは個人情報を積極的に活用するため、ネットワーク上のセキュリティが重要となります。しかし、PKI などの従来の方法では、ネットワーク上のセキュリティを確保するためのコストが高いという問題がありました。そこで、S-P サービスでは、私達が新たに開発した分散認証手法(HDAM)を用いることにより、セキュリティコストの問題を解決しています。これにより、妥当なコストでS-P サービスを実現することが可能となりました。

 現在までに、S-P サービス提供システムの開発・実装を行い、図 2のような個人の健康情報に基づくメニュー推薦システムを実現しました。今後は、より多くの個人情報を利用した高度な個人適応型サービスの実現を目指していきます。


※ このページは、2011年3月刊行の『人間情報学研究 第16巻』に掲載された記事を元にしております。その後、略歴や所属等に変更がある場合がございます。


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