研究員紹介
大江 篤志(教養学部人間科学科)
私の研究



 大学院に入ってしばらくして、おそらくこれから続くであろう大学での長い生活を考えると、そこにいる間に扱える大きさのテーマを設けた方がよいようになぜか思いました。そこで考えたのはふるさと人生です。ここでふるさとというのは、クーリーのいう第一次集団のイメージで、必ずしもうさぎを追っかけた時空間とはかぎりません。これを少しばかりアカデミックに表現すると地域社会と個人の社会化ということになります。

 
それで大学院時代に地域社会を宮城県の江島という小離島に設定して、ここでフィーールドワークをやってきています。同時に社会化という考え方の吟味もはじめたのですが、やっているうちになんと窮屈な概念なんだろうと感じ始めました。

 そういうわけで大学院時代にたてたテーマは3つのサブテーマに整理されます。第一のテーマは、個人の社会化と第一次集団としての地域社会の関係を個人史と時代史の交叉をフレームとして捉えることなのですが、これは私の学位論文と関連論文で一応の区切りをつけたところです。もちろんこれには終わりがあるとはいえないのですが、いいかげんにしておかないと残りの2つのテーマに手がまわらなくなる。

大江先生の写真
(おおえ あつし)
昭和23年 新潟県生まれ
昭和51年 東北大学大学院文学研究科博士課程単位取得満期退学
昭和51年〜山形女子短期大学、東北学院大学教養部を経て現職
 第二のテーマは社会化と地域社会に関するフ ィールドワークからえられた知見をとおして、あらためて現行の社会化概念と理論を洗いなおしてみる、あるいは現行の社会化の考え方が現実の生活事実をどこまで説明できるのか、問題点はないのか、あるとすればそれは何なのかを江島でのフィールドワークの結果を試金石にして検討することです。これは現在も進行中の課題ですが、次のテーマの出発点にもなっています。

 第三のテーマは社会化研究の歴史をとおして社会化の考え方を再考し、その展開をはかるというものです。研究史の始点はゲオルク・ジンメルの『社会分化論』(1890)、終点は最新のハンドブックである Grusec and Hastings 編の”Handbook of Socialization”(2007)あたりまでの約 120 年ほどの期間で、その間に発表された研究論文およそ 3,00 点が研究の素材となります。このサブテーマのタイトルは『社会化研究の源流と展開』にしようとおもっています。

 予定ではこの第三番目のテーマはあと数年で、つまりは私の停年までにはケリがつくはずだったのですが、もうしばらくかかりそうで、うんざりしながら文献読みをすることになるのか、それはそれで愉しみになるのか、まだわかりません。


※ このページは、2011年3月刊行の『人間情報学研究 第16巻』に掲載された記事を元にしております。その後、略歴や所属等に変更がある場合がございます。


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