研究員紹介
土橋 宏康(教養学部情報科学科)
数学研究と計算機



 私の専門は多項式の零点として表わされる曲線や曲面(さらには3次元以上の図形)を解析学、代数学等の様々な手法で研究する複素解析幾何学という分野です。例えば、円はx とy の二次の多項式の零点であり、球はx, y, z の二次の多項式の零点です。この二つの例では全ての点で滑らか、即ち、接線または接平面が引けますが多項式の次数が3以上になると滑らかでない点が所々現われることがあり、そのような点を特異点と呼びます。右上の図の二つは曲線の場合の典型的な例です。私は大学院の頃から、この特異点というものに魅せられて研究してきました。



 特異点自身が面白い対象なのですが、図形の大域的な性質と孤立して現れる特異点の個数や複雑さの間に深い関係があるといのも興味を引かれる理由の一つです。例えば、上の二つの例のように、二次の多項式の零点は特異点を持ちませんが、三次式の零点は曲線の場合ですと一つだけ、しかも上図のような簡単なものしか現れません。多項式の次数が高くなれば、現れる特異点の個数も多くなり、より複雑なものが現れてくるようになります。多項式の次数と特異点の個数や複雑さを表す量の間には精密な関係式が成り立つことは前世紀から知られていました。私の主な研究対象は、三次元の図形に現れる特異点で、定義式の次数等の図形全体の性質にある制約を付けたときに、どのような特異点が現れうるかというようなことを調べてきました。それらが、どのようなものかお見せすることはできませんが、代わりに(二次元の紙の上に表示できる)曲線の中で、今までの私の研究と少しでも関わりのあったものの中から気に入っているものを選んで次ページに載せました。

土橋先生の写真
(つちはし ひろやす)
1972年 諏訪青陵高校卒業
1976年 東北大学理学部卒業
1981年 東北大学大学院理学研究科博士課程後期課程単位取得退学
1981年 東北学院大学教養部助手、現在教養学部教授

  
 これらの図は計算機を使って描いたものです。私が大学院生の頃はこれらの曲線がどのような形をしているか知ろうと思ったとき、手で膨大な計算をしても大凡の形しかわかりませんでした。それが、30 年位前から、計算機が個人でも買えるようになり、図のような曲線を簡単に描くことができるようになりました。他にも数値実験をする等、色々と数学研究の役に立っています。本当にいい時代に生まれたと思っています。私が計算機を使い始めた頃は今と違い、何か計算機にやらせたいことがあっても、そのためのソフト等はなく、自分でプログラムを書いて実行していました。そのときは、思いどおりにいかないこともあり、色々と苦労もしましたが、それも今では楽しい思い出となっています。

 








※ このページは、2010年3月刊行の『人間情報学研究 第15巻』に掲載された記事を元にしております。その後、略歴や所属等に変更がある場合がございます。


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