研究員紹介
楊 世英
(教養学部言語文化学科)
中国社会の基本構造に関する経済学的研究



  私の研究対象は、近代中国社会であり、計量的・理論的手法を用いて、その構造と変化のメカニズムに実証分析を通じて経済理論による解析しようとする。

 中国社会が、どのような変動を遂げたのか、制度領域・成層的領域など面から、ということを解明することは、研究の最大の狙いである。研究方法は中国社会の基本構造を解析するモデルを構築し、クロス・セクションデータを用いて計量的に分析する。具体的にSimple RandomSamplingを用いてPPS抽出を行い、変数(ダミー変数)を選別する同時に多元回帰分析をする。次に検定の有意性を考察し、Multi -Composed Sampling法を利用して計量的分析を行う。またEPIシステムを利用し入力ミスやデータベースの検定も行い理論的に解析する。

 私の研究状況ついては時期によって以下のように5段階に分けることができる。

 第一段階では(1983〜1986年)数学出身の私は確率論・偏微分方程式など数学手段を活かして、主にドーマー均衡成長モデルとハロット成長モデルを用いて、比較をしながら当時社会主義計画経済体制から市場経済体制への移行する初期段階にあった中国のマクロ経済成長経路を対象として分析を行った。中国は重化学工業優先発展を中心とした産業構造は初期段階において資本蓄積の傾向に偏ることが結論であった。そして低水準均衡経済発展に基づいて統制政策と貧困下の「公平」「平等」についても取り込んだのである。

 第二段階では(1986〜1992年)大学で在職しながら大学院に入り、従来のマルクス政治経済原論と現代経済理論の中心にあるケインズ経済理論を、例えば労働雇用、所得分配、企業行動原理、剰余価値理論、家計部門の行動原理など経済学理論を比較しながら、研鑽して研究者としてなすべき基礎部分ができたのはこの時期である。それと同時に試みとして急速な市場化している中国経済社会を着目していくつか分析を行った。

 第三段階では(1992〜1996年)日本に留学機会を得て金沢大学大学院で最新の経済理論を触れることができた。この時期では中国経済は市場経済への移行期にあり、中国の独特な二重経済構造に主眼において新たな「二重二階層経済構造」を形成している過程について分析を行った。それに関連する諸経済政策が社会変化の流動性と動態性に対する影響は政策シミュレーションモデルによる数量化して分析を行った。具体的には中国の改革・開放政策以降の労働力移動のメカニズムに注目し、その実態をまとめ、それらの特徴を検討した。それは社会移動よる社会構造への影響関して開発経済学原理から工業化に伴う就業構造の変化をもたらせる限りでの分析である。

楊先生の写真
(YANG Shiying)
1979年 中国吉林省長春市第二高校卒業
1989年 中国東北師範大学数学部数学学科卒業
1991年 中国東北師範大学大学院社会科学研究科修士課程(経済学)修了
1983〜1987年 中国吉林省教育学院助手
1987〜1992年 中国吉林省教育学院専任講師
1992年 金沢大学大学院経済学研究科研究生
1996年 金沢大学大学院経済学研究科修士課程(経済学)修了
1999年 金沢大学大学院社会環境科学研究科(国際社会環境学)博士課程満期修了退学
1999〜2003年 北海道文教大学外国語学部 専任講師
1999〜現在 中国吉林大学北東アジア研究院客員教授
1999〜現在 北太平洋地域研究センター(NORPAC)客員研究員
2000〜現在 北海学園大学北東アジア研究交流センター(HINAS)共同研究員
2004年〜 東北学院大学教養学部 助教授

   第四段階では(1996〜2003年)幸いに海外学術研究機会を得て東南アジア諸国におけるような「東アジア奇跡」の現実やフィリピンマニラの貧民窟などを実感しながら、経済開発と工業化・都市化の関係について探求した。経済開発をはじめとする工業化(近代化ともいう)と環境保護の共生できるメカニズムの解明に力を入れた。経済社会学を研究するために大変重要な研究手法の一つは国際的比較ということはこの時期の最大な収穫でもある。

 なお、中国国家大型開発プロジェクトである西部大開発、「東北振興」、三峡ダム建設計画などを事例研究として調べた。

 第五段階では(2004〜現在)次のような研究課題を取り込んでいる。

1)21世紀アジア諸国において福祉国家から福祉社会へと移行するであろう。ソーシャル・セーフティネットの構築が進み、さらにソーシャル・ガヴァナンスまで進化する。こうしたグローバリゼーションに伴う社会経済や変容を把握し、それに伴う政策課題を同定することを目指し、政策開発とそれを実施するモデルの構築を図る。

2)中国は急速な経済発展に伴って貧困格差問題がますます拡大している。こうした問題を是正しようとする諸政策の効果を如何に評価することである。

3)現代中国の経済発展と社会の変動を分析の対象とし、着眼点では市場経済への移行期における経済政策の評価することである。要するに経済発展に伴い社会が階層化していき、中間層の増加が次第に拡大し、社会全体は経済学的意味で低水準から高水準へと移る。そのうち貧困線以下に生活している人々が社会的排除される。そうした社会的変容を解明したい。

 研究者としてはまだまだ未熟なものである。厳しい境遇に鍛えぬかれてりっぱな研究者になることを確信しており、そして研究の辛さ・楽しさを味わいながら、日々の努力する必要があることが所存である。様々な細か試みが積み重ねってきた今は、もう一回研究を見つめ直して新たな段階に向かうべきところ、幸いにも2004年4月から東北学院大学の世話になり、研究を続けられたのは心がほっとできたから。


※ このページは、2006年3月刊行の『人間情報学研究 第11巻』に掲載された記事を元にしております。その後、略歴や所属等に変更がある場合がございます。


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