研究員紹介
乙藤 岳志
(教養学部教養学科情報科学専攻)
ネットワーク社会とコンピュータ



 「自己紹介や代表的な研究」をということな のですが、日頃感じていることを述べさせて頂 いて、どのような感じの人物なのかを知ってもらおうということにしました。

 1.技術から人間へ

 最初、私がコンピュータに触れたのは、大学院生の頃であった。その当時のコンピュータは、 技術系の人間が利用するいわゆる「計算機」で あった。今でも、講義などで口が滑って「計算 機」としゃべって、しまったと思うことがある。 そこで、現在のコンピュータの利用方法を見 てみると、誰もコンピュータが計算をしている ようには思っていない。それよりも、ワープロ に代表される高級文具、インターネットに代表 される高級電話として利用しているだけであ る。 コンピュータおよびネットワークを利用する 様々な方法、利用上での問題点、問題点の解消 を中心に据えて研究の方向を探っていっている 訳である。最初は技術的な問題点が中心にあっ たものが、段々と人間を考えるようになってきている。 しかし、技術的な総体としてこの分野を見てみると、技術も人間も同様な重みを持って考えていかなくてはならないことも確かなことである。


乙藤先生の写真
(おとふじ たけし)
1973年 福岡県立修猷館高等学校卒業
1977年 名古屋大学理学部物理学科卒業
1985年 名古屋大学理学部助手1986年 秋田大学教育学部助教授
2001年 東北学院大学教養学部教授
2.インターネットを例に

  仕事の一部としてインターネットの利用における、セキュリティ問題がある。インターネッ トは普通の人から見れば、魔法じみた方法で通 信が行われているように見えよう。 端的にいってしまえば、インターネットは性 善説によって作られたネットワークであり、利 用する人には悪人はいないことを仮定して作ら れたものである。 インターネットの対極とも考えられる性悪説 をもとに作られたネットワークとして、電話網 がある。しかし、経済効率などのために、電話 網そのものも、インターネットの技術を利用し ようとしているのが現在である。 技術的な問題だけでなく、人間の動作特性など も考慮に入れなくてはいけないというのも理解 できよう。

3.専門性/一般教養

  面倒をみている学生諸君の就職先を見てみる と、やはりソフトウェア業界が多い。この世界 では、コンピュータと会話をすることも重要で あるが、それ以上に「お客様」との対話により システムを構成していくことの方が多い。する と、高度な専門性だけではなく、「お客様」と の会話により、必要なことを聞き出す能力、そ れをまとめ上げる能力など、一般教養的な素養 が必要とされる時代になってきている。 そのような意味からも、専門教育だけではな く、全人的な教育が必要とされている時代だと 感じている。

4.大学および大学院における教育

  このような状況にあって、今一番留意している点は以下に述べる点につきる。

1)教える内容の陳腐化の速度が非常に早い。 卒業後、5年間くらいは通用する基本的なこと を学生には伝えたい。
2)教育内容そのものが古くなってしまうのが、 仕方がないことであれば、自発的に調査・学習する態度そのものを身につけさせたい。
3)卒業あるいは修了するまでに身につけさせ る付加価値が(技術的なものであれ、態度であ れ)社会的に通用するものであってほしい。

である。やっている内容が技術的なものの割には自分自身でも、伝えようとしている内容が修 身じみてしまっていることには、苦笑を禁じえ ないのであるが。

5.社会的貢献

  大学(大学院を含む)は社会的な存在である ことはいうまでもない。在学生に対するサービ スだけではなく、広く社会に開かれたサービス も大学として一つの位置を占めているように感 じている。 コンピュータ、特にソフトウェアの世界では、 ここ10年間、インターネットの普及を利用して、 新しい流れが生まれてきている。聞かれた方も 多くなってきていると思うが、コンピュータの 基本ソフトとしてLinuxが普及を始めてきてい る。
 当初は、開発者自身が利用したいソフトウェ アを公開したにすぎないが、「私が困っている ことは、既に誰かが困ったこと」でもあり、ソ フトウェア、広くはアイデアを社会的に共有す る(できる)ようになってきたことは、大きな変 革を予感させるものである。
  Open Softwareと呼ばれているものは、上で示 したように、Give & Takeで成り立っている。 ある種のボランティアであり、このような場所 で、専門性を生かした社会的貢献も可能になってきている。また、私自身も非公式に行ってき ている。 現在は、個人のホームページを解説すること も非常に簡単になってきている。研究を論文に まとめることも重要であるが、上記のようなボ ランティアベースの、社会的貢献の方法もある ことを、学生諸君にも理解してもらいたいなと 感じているこのごろである。

※ このページは、2003年3月刊行の『人間情報学研究 第8巻』に掲載された記事を元にしております。その後、略歴や所属等に変更がある場合がございます。


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