§2ヒューマンエラー 

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B常識の落とし穴

 1996年アトランタオリンピック。YAWARAちゃんこと田村亮子の決勝の相手は北朝鮮の無名選手。国際試合初出場の選手である。田村の金メダルは確実と皆が思った。ところが無敵の田村が負けた。誰も予想しなかった結果であった。田村敗戦の弁は「自分の組み手ができなかった」。

 北朝鮮の選手は、実は柔道着を左前に着ていた。日本人に限らず世界の柔道選手でそのような着方をする選手はいない。それが田村を惑わした。自分の組み手ができない、おかしい。そのあせりの中で「効果」を取られた。柔道着のあわせが反対だったとは、誰も思わなかったし、そんな反対に着る選手の出現を誰も想定していなかった。それ以降、柔道着の着方は規則に定められた。

 田村亮子にも、彼女ほどの柔道家にしても、思いこみのエラーがあった。誰も考えつかなかったことをやって試合に臨んだケー・スンヒ選手のクレバーさを誉めるべきなのかも知れない。

 オリンピックチームはとかく同質集団となる。同じ思いこみをしがちである。誰か一人、異なった視点からものごとを見つめられる人を養成する雰囲気に欠けてしまうのではないだろうか。


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