§2ヒューマンエラー      吉田 信彌(2001年記、2005年改訂)
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(1)思いこみのスポ根物語

@思いこんだら試練だ!

 昔、漫画は子供が読むものとさげすまれた。それが大人も読む劇画へと進化し、そしてアニメとなった今は、世界の人に愛される、日本が誇る文化となった。スポーツ根性物語はその一大ジャンルである。その最高峰に位置する傑作と言えば、梶原一騎原作・川崎のぼる画「巨人の星」であろう。

 梶原一騎の構想は父性愛を描くヒューマンな物語にあった。主人公の名前は、巨人の星をめざして天駆けていくイメージをヒューマンにかけた星飛雄馬であった。1966年から少年マガジンに連載を開始し、人気を博し、68年3月からTVで放映されると知らぬ人はいない国民的スポ根物語となる。テレビの主題歌は時代に逆行するかのような軍歌調であった。前奏とともに高く指し上がられたボールが画面を占領する。飛雄馬の目がメラメラと炎と燃える。高く上げた右足。放ったボールがこちらに迫る。こうして主題歌が始まる。♪♪思いこんだら試練の道をゆくが男のど根性、、、背景の原画の一枚一枚が多くの人の記憶に留まった。労務者の父がちゃぶ台を引っくり返して飛雄馬を叩く。つぎはぎ服の飛雄馬少年のうさぎ跳び。父が指差す天空の星を並んで見上げる父と子。それをそっと見守る姉明子の憂いの表情。

 さて、その中の一枚。飛雄馬少年がグランドをならすため何かを引いている画がある。それは、昔は校庭にはよくあったローラーなのだが、その道具を「コンダラ」と思っている人がいる。その画がでるときの歌詞「思い込んだら」を「重いコンダラ」ととったのである。笑い話には聞いていたが、そう思いこんだ人は意外と多いらしい。渡辺徹がラジオ番組で「思いこんだら(重いコンダラ)」というコーナーを開設したほどである。畏友、芳賀繁立教大学教授 (http://www.rikkyo.ne.jp/~haga/)『失敗のメカニズム』(角川文庫,2000年)にも紹介されている。

 あー勘違い!思いこみのエラーである。この程度なら笑い話ですむ。エラーは人間的な出来事でもある。しかし思いこんだらどんな変なことになるか。試練が待っているかもしれない。飛雄馬のエラーにはじまる、まずは思いこみのエラースポ根編である。

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